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ユリス・ナルダンとは?|マリンクロノメーターの名門からFREAKを生み出した革新的時計ブランド

スイスの高級時計ブランドには、ロレックス、パテック フィリップ、オーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンなど、世界的に知られた名門ブランドが数多く存在します。
その中でも、時計好きや機械式時計の愛好家から高い評価を受けているブランドのひとつが「ユリス・ナルダン(Ulysse Nardin)」です。
ユリス・ナルダンの歴史は1846年に始まります。創業当初から精密時計の製造に力を注ぎ、特にマリンクロノメーターの分野で世界的な名声を築き上げました。
そして20世紀末から21世紀にかけては、従来の高級時計とは一線を画す大胆な機械式時計を次々と発表。中でも2001年に登場したFREAK(フリーク)は、文字盤も針もリューズも持たないという、それまでの時計の常識を大きく覆すモデルでした。
今回は、そんなユリス・ナルダンの歴史から代表的なコレクション、革新的な技術、そしてブランドならではの魅力まで詳しく紹介します。
ユリス・ナルダンの歴史
1846年にスイス・ル・ロックルで創業
ユリス・ナルダンは1846年、スイス時計産業の中心地のひとつであるル・ロックルで創業しました。
創業者のユリス・ナルダンは1823年生まれ。時計師だった父から時計製造を学び、若くして精密時計の世界へ進みました。
当時の時計産業において非常に重要だったのが「正確な時間を測ること」です。
現在ではGPSや電子機器によって正確な位置や時間を簡単に確認できますが、19世紀の航海では正確な時計が航海の安全を左右するほど重要なものでした。
ユリス・ナルダンはこうした時代背景の中で、精度を追求した時計、とりわけマリンクロノメーターの製造に力を注いでいきます。
ユリス・ナルダンとマリンクロノメーター

ユリス・ナルダンを語るうえで絶対に外せないのが、マリンクロノメーターです。
マリンクロノメーターとは、船舶の航海に使用される非常に高精度な時計です。
当時の航海では、正確な時刻を知ることが経度を計算するうえで重要でした。そのため、船舶には極めて精度の高い時計が必要とされていました。
ユリス・ナルダンは19世紀から20世紀にかけて、この分野で圧倒的な存在感を示します。
ブランドによれば、ユリス・ナルダンのマリンクロノメーターは50以上の海軍に供給され、長期間にわたって海洋航海用の精密時計として活躍しました。
また、ニューシャテル天文台で検定されたマリンクロノメーターのうち、過去100年間で77%がユリス・ナルダン製だったとブランドは説明しています。
この歴史こそが、現在のユリス・ナルダン「Marine」コレクションにも受け継がれているのです。
精密時計メーカーとしての実績
ユリス・ナルダンは単にマリンクロノメーターを製造していただけではありません。
精度を競うクロノメトリーの世界でも数多くの賞を獲得し、ブランド公式資料では4,300以上のクロノメトリー関連の受賞実績を掲げています。
また1862年にはロンドン万国博覧会で最初の金メダルを獲得。その後も精密時計メーカーとしての地位を確立していきました。
ユリス・ナルダンという名前が「精度」「航海」「クロノメーター」と結びついているのは、こうした長い歴史があるためです。
クォーツショックと1983年の転機
しかし、ユリス・ナルダンの歴史は常に順風満帆だったわけではありません。
1970年代から1980年代にかけて、クォーツ時計が急速に普及すると、スイスの機械式時計産業は大きな打撃を受けます。
ユリス・ナルダンも例外ではなく、1983年にロルフ・W・シュナイダーがブランドを取得。
ここからユリス・ナルダンは、単なる伝統的な時計メーカーではなく、「最先端の機械式時計を生み出すブランド」へと大きく方向転換していきます。
ロルフ・シュナイダーとルートヴィヒ・オッホスリン
現代のユリス・ナルダンを語るうえで重要なのが、ロルフ・シュナイダーと時計師・技術者のルートヴィヒ・オッホスリンです。
2人の協力によって、ユリス・ナルダンは非常に個性的な複雑時計を次々と発表していきました。
その代表例が「トリロジー・オブ・タイム」です。
- Astrolabium Galileo Galilei
- Planetarium Copernicus
- Tellurium Johannes Kepler
天文学をテーマとしたこれらの時計は、一般的な腕時計とは大きく異なる複雑な表示機構を備えていました。
特にアストロラビウムは21もの複雑機構を備え、1988年にはギネス世界記録にも登録されたことで知られています。
ユリス・ナルダンを象徴する「FREAK」
ユリス・ナルダンの名前を世界中の時計愛好家に強烈に印象づけた時計が、2001年に登場したFREAK(フリーク)です。
FREAKが登場した当時、機械式時計として非常に異例の構造を採用していました。
最大の特徴は、一般的な腕時計にあるものが存在しないことです。
- 通常の文字盤がない
- 通常の針がない
- リューズがない
その代わり、時計内部のムーブメントそのものが回転しながら時間を表示します。
つまり、ムーブメントの一部が「時針」のような役割を果たすという、極めて独創的な構造です。
ユリス・ナルダン公式資料では、FREAKは2001年に登場し、シリコン技術を機械式時計に取り入れた革新的なモデルとして紹介されています。
時計業界を変えた「シリコン技術」
FREAKを語る際に欠かせないのがシリコンです。
現在では高級時計のムーブメントにシリコン製の部品を採用することは珍しくありません。
しかし、2001年当時は非常に革新的なアプローチでした。
シリコンは軽量で、摩擦や磁気などの面で機械式時計の部品に適した特性を持っています。
ユリス・ナルダンはFREAKを通じてシリコン技術を積極的に研究し、その後の高級時計業界にも大きな影響を与えました。
さらに2007年には、シリコンにダイヤモンドの層を組み合わせたDIAMonSILを採用したFREAK DIAMonSILを発表しています。
代表的なコレクション
FREAK(フリーク)
ユリス・ナルダンを象徴するコレクションです。
最大の特徴は、一般的な時計とはまったく異なるムーブメント主体のデザイン。
FREAKは単なる高級時計ではなく、ユリス・ナルダンが考える「未来の機械式時計」を具現化した存在といえるでしょう。
現在ではFREAK X、FREAK ONE、FREAK Sなど、さまざまな発展モデルが登場しています。
Marine(マリーン)
ユリス・ナルダンの伝統をもっとも分かりやすく感じられるコレクションがMarineです。
そのデザインには、マリンクロノメーターの歴史が反映されています。
ローマ数字、特徴的な針、ベゼルなど、航海用精密時計を思わせる要素が取り入れられています。
FREAKが「未来のユリス・ナルダン」なら、Marineは「伝統のユリス・ナルダン」といえる存在です。
Diver(ダイバー)
スポーツウォッチとしてのユリス・ナルダンを代表するのがDiverです。
高い防水性能を備えたモデルだけでなく、軽量素材やスケルトン構造など、ユリス・ナルダンらしい先進的な技術を組み合わせたモデルも展開されています。
伝統的なドレスウォッチとは異なり、現代的で個性的なデザインが特徴です。
Blast(ブラスト)
Blastは、ユリス・ナルダンの先進的なデザインと複雑機構を強く感じられるコレクションです。
大胆なケースデザインやスケルトン構造を採用したモデルも多く、時計そのものを「機械」として楽しみたい人に向いたシリーズです。
FREAKと並び、現在のユリス・ナルダンを象徴する現代的なコレクションのひとつとなっています。
ユリス・ナルダンの魅力とは
伝統と革新が共存している
ユリス・ナルダン最大の魅力は、非常に古い歴史を持ちながら、保守的な時計ブランドにとどまっていないことです。
1846年創業という長い歴史を持ちながら、FREAKのような時計を生み出している点は非常にユニークです。
「昔ながらの時計を守る」のではなく、「機械式時計そのものを進化させる」という姿勢がブランドの大きな特徴といえるでしょう。
時計好きほど面白さが分かるブランド
ユリス・ナルダンは、ロレックスのように誰もが知っている時計ブランドというよりも、時計の構造や歴史を知るほど面白さが増していくブランドです。
特にマリンクロノメーターの歴史、天文時計、複雑機構、シリコン技術、FREAKの特殊構造などを知ると、その独自性がより明確になります。
「人と違う時計」を選びたい人にも注目される
ユリス・ナルダンは、一般的な高級時計とはデザインの方向性がかなり異なります。
そのため、誰もが知っている有名ブランドを選ぶのではなく、時計そのものの面白さや技術、個性を重視したい人にとって魅力的な存在です。
現代のユリス・ナルダン
ユリス・ナルダンは現在も独立系マニュファクチュールとして、革新的な機械式時計を製造しています。
2022年にはマネジメント・バイアウトによって再び独立性を取り戻しました。
また2023年にはFREAK ONEがジュネーブ時計グランプリ(GPHG)の「Iconic Watch」部門を受賞しています。
現在のコレクションでは、FREAK、Blast、Marine、Diverなどを中心に、伝統的なクロノメトリーから最先端の機械式時計まで幅広く展開しています。
まとめ
ユリス・ナルダンは、1846年にスイス・ル・ロックルで創業した歴史ある時計ブランドです。
その原点は、航海に使用される高精度なマリンクロノメーターにあります。
19世紀から20世紀にかけて精密時計メーカーとして世界的な評価を確立し、クォーツショックを経て、1980年代以降は複雑時計や革新的な機械式時計の開発へと進んでいきました。
そして2001年に登場したFREAKは、文字盤や針、リューズを持たない独創的な構造とシリコン技術によって、ユリス・ナルダンを現代時計界を代表する革新的ブランドへと押し上げました。
「伝統的な精密時計メーカー」と「未来志向の革新的マニュファクチュール」。
この二つの顔を同時に持っていることこそ、ユリス・ナルダン最大の魅力です。
マリンクロノメーターからFREAKまで、約180年にわたって「より正確に、そしてより新しく」という時計作りを追求してきたユリス・ナルダンは、今後も高級時計業界の中で独自の存在感を放ち続けるブランドといえるでしょう。
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